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？？？ ｢あっあーあーあー！｣

主人公 (ハリがあって、よく通る声……)

主人公 (背が高くて、姿勢もいい。遠くにいてもちゃんと目立つ。ユニヴェールってああいう人が来る場所なんだな)

？？？ ｢ん……？｣

主人公 ｢……あれ？｣

主人公 (あの人、こっちに近づいてくる……？)

？？？ ｢スッゲェなー！　女じゃん！｣

主人公 ｢……ッ！｣

？？？ ｢どっからどう見ても女だよなぁ……。
やっぱユニヴェールって、こういう奴が来るんだな｣

？？？ ｢……ってワリィ、いきなり！｣

主人公 ｢あ、いえ……｣

？？？ ｢お前も受験生だろ？　やっぱジャンヌ狙いなのか？｣

主人公 ｢ジャンヌ？｣

？？？ ｢ユニヴェールじゃ男役はジャック、
女役はジャンヌって呼び方だろ｣

主人公 (そうか、ユニヴェールなら女役志望の女性的な容姿をした生徒がいても珍しくはないんだ)

織巻寿々 ｢オレ、織巻寿々[おりまき すず]。受験番号800番、
ジャック志望だぜ！｣

主人公 ｢私は立花希佐。796番です｣

織巻寿々 ｢へー、言葉づかいもジャンヌっぽいな。
ふだんから『私』って言ってんの？｣

主人公 ｢あっ……は、はい。そうなんです｣

根地黒門 ｢やぁやぁ、みんな集まっているね！
今日はみんなにステキなプレゼントがあるよ｣

主人公 ｢プレゼント？｣

根地黒門 ｢衣装部の皆々さま方に感謝しなさい！｣

織巻寿々 ｢すげー！『不眠王』の衣装ができてる！
　王様の衣装めっちゃカッケー！｣

世長創司郎 ｢衣装があると、今まで以上に自分の役のイメージが
わきやすくなるね｣

睦実介 ｢衣装を着てきちんと動けるのか、
しっかり踊れるのか、確認しておくといい｣

根地黒門 ｢日常じゃそうそうお目にかかれない服ばかり
だからねぇ｣

織巻寿々 ｢うわっ！　なんなんスか根地先輩、その衣装ッ！｣

白田美ツ騎 ｢そうそうどころか二度とお目にかかれないでしょ、
それ｣

高科更文 ｢ま、舞台ならではだな｣

主人公 (これが私の衣装……。この衣装を着て舞台に立つんだ)

主人公 (新人公演が近づいてきてる。頑張ろう！)

主人公 ｢……！｣

主人公 ｢カイさん……｣

睦実介 ｢大丈夫か｣

主人公 ｢はい、すみません……｣

睦実介 ｢この雨じゃ、走ったところで意味がないな……｣

睦実介 ｢お前にケガをさせたら申し訳が立たない。
ゆっくり山を下りよう｣

主人公 ｢はい……｣

睦実介 ｢手を、離すぞ｣

主人公 (……カイさんの手)

主人公 (骨張っていて、大きい)

茜あおは主人公が女性であることを知る数少ない人物。彼女と過ごす休日は、主人公が女の子に戻れる貴重な時間です。

そして、そんな二人が食べているのは玉阪名物みちのぼう。美味しそうです……！

主人公 (ここでダンスの試験があるんだ。……あれ？)

主人公 (ダンスルームのすみに座っている人……)

高科更文 ｢……｣

主人公 (座っているだけなのに、なぜか目をうばわれる……。受験生じゃないみたいだけど、誰だろう？)

試験官 ｢では、今からダンスの試験を始める｣

試験官 ｢お手本は本学生の高科更文[たかしな さらふみ]くんだ。よろしく｣

高科更文 ｢……もう次スか？｣

高科更文 ｢はぁ、適当に引き受けんじゃなかった。何時間も踊りっぱなし。
バイト代出るっつっても、これじゃワリに合わないわ｣

試験官 ｢高科。そういうのは承諾する前に言いなさい。
もうすぐ交代の生徒が来るから｣

主人公 ｢はぁ……。ホールに行かなきゃ……｣

主人公 (えっと、ホールって……)

睦実介 ｢……向こうだ｣

主人公 ｢えっ｣

睦実介 ｢ホール｣

受験生A ｢……おい、あれって、クォーツの……｣

受験生B ｢クォーツの『ジャックエース』睦実 介[むつみ かい]だ｣

睦実介 ｢…………｣

主人公 (ジャンヌのトップが『アルジャンヌ』だから、『ジャックエース』はジャックのトップ……)

根地黒門 ｢おお、おお、入りたまえ｣

主人公 (あの人が先生……？　でも制服を着てる)

根地黒門 ｢校内放送で高らかに呼ばれていたね。初日からなにか問題でも起こしたのかい？　
窃盗、強盗、過失傷害、恐喝、脅迫、銀行強盗……｣

主人公 (ものすごく口が回る人だ……！　
次から次に言葉が出てくる)

高科更文 ｢……その足で学校くる奴なんていねーだろ、クロ｣

主人公 (あの人……入学試験で
模範ダンスを踊っていた高科更文さんだ)

根地黒門 ｢そんな肝っ玉のすわった新入生がいてもいいじゃないか、フーミン！　この世はドラマがすべて！｣

主人公 (校長先生が私以上に女性らしい人はいくらでもいるって言ってたけど本当だ)

主人公 (お人形さんみたいに可愛い)

世長創司郎 ｢あの人、白田美ツ騎[しろた みつき]先輩だよ。歌が得意なんだって｣

世長創司郎 ｢希佐ちゃんがいないときに根地先輩が言ってた｣

主人公 ｢そうなんだ……｣

白田美ツ騎 ｢……｣

白田美ツ騎 ｢……なに見てんの｣

主人公 ｢あっ、すみません！｣

主人公 ｢そうだ、どのクラスになるのか確認しないと……｣

世長創司郎 ｢え……希佐ちゃん？｣

主人公 ｢え……｣

世長創司郎 ｢あ、すみません、そんなはずは……｣

主人公 ｢……創ちゃん？　
いつも演劇ごっこしてた世長創司郎[よなが そうしろう]くん？｣

世長創司郎 ｢……！！　ホントに希佐ちゃんなの！？｣

主人公 ｢久しぶり！　
創ちゃんもユニヴェール受験してたんだね！｣

世長創司郎 ｢うん！　ずっと夢だったから……｣